成年後見
成年後見制度とは。法定後見と任意後見、申立ての流れ・費用・期間
成年後見制度は、判断能力が十分でなくなった人を法律の面から支える制度です。このページでは、裁判所や厚生労働省などの公的資料をもとに、種類、申立ての流れ、費用、期間、始めたあとの注意点を整理します。個別の判断は、家庭裁判所や専門家への確認が必要です。
結論:法定後見は、判断能力が不十分になってから家庭裁判所に申し立てる制度です
成年後見制度には、法定後見と任意後見があります。法定後見は、本人の判断能力が不十分になったあとに、家庭裁判所が成年後見人等を選ぶ制度です。任意後見は、判断能力があるうちに、本人が自分で選んだ人に任せる内容を契約で決めておく制度です。
知っておきたい点を先にまとめます。
- 法定後見は「補助」「保佐」「後見」の3つに分かれ、本人の判断能力の程度で決まります。
- 申立ては、本人の住所地の家庭裁判所にします。
- 申立ての費用は、収入印紙で800円分と2,600円分(登記手数料)、このほかに連絡用の郵便切手などが要ります。
- 令和7年に終局した事件の約71.1%は、2か月以内に終わっています(統計であり、期間の保証ではありません)。
- 後見人に誰が選ばれるかは家庭裁判所が決め、家族が選ばれるとは限りません。選任結果への不服申立てはできません。
- 一度始めると、本人の判断能力が戻るか、本人が亡くなるまで続きます。
法定後見の3つの種類(補助・保佐・後見)の違いは?
法定後見は、本人の判断能力の程度によって、次の3つに分かれます。
| 種類 | 対象になる人 | 裁判所資料の表現 |
|---|---|---|
| 補助 | 判断能力が不十分な人 | 「判断能力が不十分な方」 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な人 | 「判断能力が著しく不十分な方」 |
| 後見 | 判断能力が欠けているのが通常の状態の人 | 「判断能力が欠けているのが通常の状態の方」 |
どの類型にあたるかは、医師の診断書などを踏まえて家庭裁判所が判断します。家族が決めることはできません。
後見人等が取り消せる行為には、日用品の購入など日常生活に関する行為は含まれません。民法第9条は、成年被後見人の法律行為は取り消すことができるとしたうえで、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」は除くと定めています。
また、本人の居住用の不動産を処分するときは、家庭裁判所の許可が必要です。許可なしに処分した場合は無効です。
法定後見と任意後見は、どこが違う?
名前は似ていますが、始める時期も、決める人も異なります。
| 比べる点 | 法定後見 | 任意後見 |
|---|---|---|
| 始める時期 | 判断能力が不十分になってから | 判断能力があるうちに契約を結んでおく |
| 誰が決めるか | 家庭裁判所が成年後見人等を選ぶ。権限は基本的に法律で決まっている | 本人が、任意後見人になる人と任せる内容を契約で決める |
| 手続きの形 | 家庭裁判所に申し立てる | 公証人が作る公正証書で契約を結ぶ |
| 効力が生じるとき | 後見開始等の審判のとき | 家庭裁判所が任意後見監督人を選んだとき |
| 取り消す権限 | 一定の範囲であり(類型や付与された権限による。日常生活に関する行為は対象外) | なし(契約で定めた範囲で代理する) |
| 監督人 | 必要に応じて、家庭裁判所の判断で選ぶ | 全件で任意後見監督人が選ばれる |
任意後見契約を公正証書で結ぶときの費用について、厚生労働省のページには手数料などの記載がありますが、現行の額と食い違う可能性があるため、このページには金額を載せません。公証人の手数料のほか、登記にかかる費用などがかかります。金額は改定されることがあるため、最新の額は公証役場で確認してください。
任意後見監督人が選ばれたあとに後見開始等の審判がされると、任意後見契約は終了します。選ばれる前であれば、契約の効力は失われません。
任意後見の相談は、最寄りの公証役場が窓口です。
申立てができるのは誰で、どこに申し立てる?
後見開始の申立てができる人は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官、市区町村長です(民法第7条ほか)。任意後見契約が登記されている場合は、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人も申し立てられます。
申立先は「本人の住所地の家庭裁判所」です。住民票の住所と実際に暮らす場所が違う場合の扱いは、このサイトの調査では確認できていません。申立ての前に、家庭裁判所に確認してください。
令和7年の統計では、申立人の内訳は本人が24.8%、市区町村長が23.7%(10,139件)、本人の子が18.5%の順でした。
補助開始の審判や、補助人・保佐人に代理権などを与える審判を本人以外の人が申し立てる場合は、本人の同意が必要です。
申立てから後見が始まるまでの流れは?
裁判所のQ&Aによると、流れは「手続案内、申立て、審問・調査・鑑定等、審判」です。開始の審判と同時に、後見人等が選ばれます。
- 手続案内:家庭裁判所で、申立ての方法や必要書類の説明を受けます。
- 申立て:申立書と添付書類を提出します。
- 審問・調査・鑑定など:参与員が申立人から説明を聞いたり、家庭裁判所調査官が申立人・本人・後見人候補者に会って事情や本人の意見を聞いたりすることがあります。ウェブ会議が使える場合もあります。必要に応じて裁判官の審問もあります。
- 審判:後見等の開始が決まり、同時に後見人等が選ばれます。
標準的な添付書類は、次のとおりです。家庭裁判所によって追加の書類を求められることがあります。
- 本人の戸籍謄本
- 本人の住民票または戸籍附票
- 後見人候補者の住民票または戸籍附票
- 本人の診断書(発行から3か月以内)
- 本人情報シートの写し
- 成年被後見人等の登記がされていないことの証明書
- 財産や収支に関する資料
一度出した申立てを取り下げるには、家庭裁判所の許可が必要です。裁判所のQ&Aは、「申立人の希望する方が選任される見込みがない」という理由では、原則として許可されないと考えられる、と説明しています。申し立てる前に、後見人を選ぶのは家庭裁判所であることを理解しておく必要があります。
費用はいくらかかる?
裁判所のページと厚生労働省のページで確認できた費用は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立手数料 | 収入印紙800円分 |
| 登記手数料 | 収入印紙2,600円分 |
| 連絡用の郵便切手 | 郵便料は裁判所ごとに異なります。保管金として納付することも、郵便切手で納付することもできます。金額は申立先の家庭裁判所に確認が必要です。 |
| 鑑定費用 | 鑑定が必要な場合、申立人が負担することがあります。厚生労働省のページでは「ほとんどの場合、10万円以下」と書かれています。 |
| 書類の取得費 | 戸籍謄本、登記事項証明書、診断書などの入手費用は別にかかります。診断書の料金は医療機関ごとで、公的な標準額は確認できていません。 |
| 追加の申立て | 補助・保佐では、同意権や代理権の付与など追加の申立てごとに、別途収入印紙800円分が必要です。 |
鑑定の実績は、令和7年の統計で、終局した事件のうち鑑定を実施したのが約3.4%です。鑑定費用は5万円以下が約43.7%、10万円以下が約85.8%でした(5万円超10万円以下が42.1%、10万円超15万円以下が13.0%、15万円超20万円以下が1.1%、20万円超が0.1%)。鑑定にかかった期間は、1か月以内が約52.6%でした。
裁判所のQ&Aは、後見開始と保佐開始の審判では原則として鑑定が必要と法律で定められているとしています。それでも実績として鑑定が行われるのは3.4%にとどまっており、その理由は、確認した資料には説明がありません。
経済的に余裕がない場合は、法テラスの民事法律扶助(申立代理人の費用の立替えなど)を受けられる場合があります。また、法定後見の経費を助成している市町村もあると、厚生労働省のページに書かれています。
どのくらいの期間がかかる?
令和7年1月から12月に終局した成年後見関係事件42,674件では、次のとおりでした。
| 期間 | 割合 |
|---|---|
| 1か月以内 | 37.9% |
| 1か月を超え2か月以内 | 33.2% |
| 2か月を超え3か月以内 | 16.2% |
| 2か月以内(上の2つの合計) | 約71.1% |
| 4か月以内 | 約93.8% |
これは終わった事件の統計であり、個々の申立てにかかる期間を約束するものではありません。事案によって、書類の準備や調査、鑑定の有無で変わります。終局した事件のうち、申立てが認められたのは約95.1%でした。
申立ての動機は、令和7年の統計(複数回答)で、預貯金等の管理・解約が93.4%、身上保護が74.2%などでした。
成年後見は家族が後見人になれる?
家族が後見人の候補者として申立書に書くことはできますが、選ぶのは家庭裁判所です。裁判所のQ&Aには、「その結果、候補者が選任されない場合があります。」と書かれています。
令和7年の実績では、親族が成年後見人等に選ばれたのは全体の約16.4%(7,014件)、親族以外が約83.6%(35,718件)でした。親族以外の内訳は、司法書士が11,966件、弁護士が8,903件、社会福祉士が7,280件、市民後見人が390件などです。親族が後見人候補者として申立書に書かれていた事件の割合は約19.7%でした。
誰が選ばれたかについて、不服の申立てはできません。裁判所のQ&Aにも、「後見人(保佐人・補助人)に誰が選任されたかについては、不服の申立てはできません。」と書かれています。
後見人になれない人(欠格事由)は、未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人、破産して復権していない人、本人に対して訴訟をしたことがある人とその配偶者・親子、行方不明の人です。
このことは、申立ての前に家族で共有しておきたい点です。家族を後見人にしたいという希望は伝えられますが、通るとは限りません。
後見人の報酬は誰がどう決める?
後見人等が家庭裁判所に報酬付与の申立てをし、家庭裁判所が報酬額を定めたとき、本人の財産から受け取れます。民法第862条は、家庭裁判所が後見人と本人の資力その他の事情によって、本人の財産の中から相当な報酬を与えることができると定めています。
金額は、裁判官が決めます。裁判所のQ&Aには、「報酬の金額については、裁判官が個々の事案の実情に応じ、対象期間中の後見等の事務内容、本人の財産の内容等を総合考慮して、裁量で決定するものです。」とあります。成年後見監督人等の報酬も、家庭裁判所が決めます。
具体的な金額の目安は、このサイトの調査では確認できていないため、ここには書きません。気になるときは、申立てを考えている家庭裁判所や相談窓口で聞いてください。
成年後見は途中でやめられる?
原則として、やめられません。裁判所のQ&Aには、「成年後見制度の利用は,本人が病気などから回復し判断能力を取り戻すか,本人が亡くなるまで続きます。」「ご家族の意思や本人の希望で終わらせることもできません。」と書かれています。
当初の目的が保険金の受領や遺産分割などであっても、それが済んだら終わる、という仕組みではありません。
ただし、次のような手続きはあります。
- 開始の原因がなくなったとき(回復したときなど)、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人などの請求により、家庭裁判所が後見開始の審判を取り消します(民法第10条)。
- 後見人個人が辞めたい場合は、正当な事由があるとき、家庭裁判所の許可を得て辞任できます(民法第844条)。高齢や病気は正当な事由と認められることもあります。ただし、辞任しても制度自体が終わるわけではなく、新しい後見人を選ぶ申立てが必要です。
- 後見人に不正な行為などがあれば、家庭裁判所が解任の審判をすることがあります(民法第846条)。
始める前に、本当にこの制度が必要かを、家庭裁判所や権利擁護相談窓口で相談しておくことが大切です。
後見が始まったあと、家庭裁判所への報告は?
民法第863条により、家庭裁判所や後見監督人は、いつでも後見人に後見事務の報告や財産目録の提出を求め、事務や本人の財産の状況を調べることができます。
選任後は、速やかに本人の状況を確認し、財産目録や収支予定表などを作って家庭裁判所に提出します(初回報告)。そのあとに定期報告があります。裁判所のサイトには、初回報告と定期報告の統一書式が掲載されています。
定期報告の頻度や提出期限は、このサイトの調査では公的な記述を確認できていません。家庭裁判所の指示に従うことになります。
後見人等が不正な行為をした場合は、解任されることがあります。損害賠償や、背任罪、業務上横領罪などの刑事責任を問われることもあり、本人と親子の関係であっても刑罰は免除されないと、裁判所のQ&Aにあります。
相談はどこにすればいい?
厚生労働省の案内では、法定後見は「権利擁護相談窓口」、任意後見は「最寄りの公証役場」、手続きは「最寄りの家庭裁判所」が窓口です。まとめは困ったときの相談先に載せています。
成年後見を実際に利用した家の話は運営者の体験ページに書いています。制度全体の入口は親が認知症になると、お金と家はどうなるかで、財産管理のもう1つの道は家族信託の解説で説明しています。
よくある質問
成年後見は、元気なうちに始めたほうがいいですか?
法定後見は、判断能力が不十分になってから家庭裁判所に申し立てる制度なので、元気なうちに使うものではありません。元気なうちに備える方法として、任意後見や家族信託があります。どれを使うかは、本人の意思が前提です。
申立てに弁護士や司法書士は必須ですか?
このサイトの調査では、申立てに専門職が必須かどうかを示す記述を確認していません。まずは家庭裁判所の手続案内や権利擁護相談窓口で確認してください。経済的に余裕がない場合の費用の助成については、法テラスの民事法律扶助が使える場合があると厚生労働省のページにあります。
診断書は誰に書いてもらうのですか?
添付書類として、発行から3か月以内の本人の診断書が求められます。作成を頼む医師や費用については、公的な標準額は確認できていません。家庭裁判所に所定の様式があるかも含めて、事前に確認してください。
市区町村長が申し立てることもありますか?
あります。令和7年の統計では、市区町村長の申立ては10,139件で、申立人の23.7%でした。身寄りがない場合などの対応は、地域包括支援センターや市区町村の窓口で相談できます。ただし、地域包括支援センターが申立てをどこまで支援するかは、このサイトの調査では確認できていません。
報酬の目安はいくらですか?
金額は裁判官が事案ごとに決めます。このページでは、金額の目安を確認していないので、書きません。
このページで分からないこと
次の点は、調べた公的資料では確認できていません。
- 定期報告の具体的な頻度と提出期限(家庭裁判所ごとの運用で、統一の公的な記述を確認できませんでした)。
- 申立先で、住民票の住所と実際の居所が違う場合の扱い。
- 診断書の作成費用の標準額(医療機関ごとに異なります)。
- 郵便切手の具体的な金額(裁判所ごとに異なります)。
- 後見人報酬の標準額や目安。
- 法テラスの民事法律扶助で、成年後見の申立てが対象になる細かい条件。
制度は改正されることがあるため、申立てを考えるときは、最新の内容を裁判所や相談窓口で確認してください。