親から、あずかるもの。家族信託と、免許返納と。親が元気なうちに知っておくこと
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親が元気なうちに、話しておきたいこと。お金・住まい・運転・もしものとき

親が元気なうちに家族で話しておくと、あとで慌てにくい項目を、公的機関の資料で確認できた範囲だけ整理しました。話し方のコツや正解は、公的資料には細かく書かれていません。そのため、このページは「何を確認するか」の一覧と、相談先の案内に絞っています。個別の法律や税の判断はしていません。

話し合う人たちのイラスト
イラスト:さつき

親と何を話しておけばいい?

結論から書きます。公的な資料から拾える確認項目は、次の7つです。全部を一度に決める必要はなく、まず「どの窓口に聞けるか」を知っておくだけでも、あとの動きが変わります。

  1. 相談窓口:地域包括支援センターがどこにあるか。
  2. お金の管理:判断能力があるうちにできる備え(任意後見・家族信託)。
  3. 遺言:書くか、書くならどこに置くか。
  4. 医療や介護の希望:「人生会議(ACP)」で話し合う。
  5. エンディングノート:連絡先や財産の置き場所などの記録。
  6. 運転:不安が出たときの相談先と、返納のしくみ。
  7. 詐欺への備え:電話でお金の話が出たときの動き方。

このページは、厚生労働省、法務省・法務局、日本公証人連合会、消費者庁、国民生活センター、警察庁の公開資料を、2026年11月3日に原文で確認して書いています。確認できなかった点は書かず、最後の「このページで分からないこと」にまとめました。

まず知っておく相談先:地域包括支援センター

厚生労働省のページでは、地域包括支援センターを、「地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い…市町村が設置しています」と説明しています。令和7年4月末現在で全国に5,487か所(支所にあたるブランチを含めると7,374か所)あります。

全国の地域包括支援センターの一覧は、厚生労働省のページから都道府県のホームページへ進んで探せます。

家族で話す前に、「担当の窓口の名前と電話番号」を控えておくだけでも、次の項目の相談がしやすくなります。ほかの窓口の一覧は困ったときの相談先にまとめています。

お金の管理は、判断能力があるうちの備えを調べておく

成年後見(法定後見)は、判断能力が不十分になってから家庭裁判所に申し立てる制度です。元気なうちに備える方法としては、任意後見や家族信託などがあります。どれを選ぶか、そもそも使うかどうかは、親本人の意思が前提になります。

それぞれの仕組みと費用、注意点は、別のページに公的資料で確認した内容を書いています。

家族で話すときは、制度名を決めるよりも、「通帳や印鑑、保険の書類がどこにあるか」「お金の管理を誰かに頼むとしたら誰か」を聞いておくところから始められます。後者の答えは、親の意思としてそのまま記録しておくと、あとで専門家に相談するときにも使えます。

遺言書は法務局で預かってもらえる?

結論です。自分で書いた遺言(自筆証書遺言)は、法務局(遺言書保管所)に預ける「自筆証書遺言書保管制度」があります。法務省のページで確認できた内容は次のとおりです。

  • 預けるのは、民法の自筆証書遺言の形式に合ったものに限られます。全文・日付・氏名を本人が自書して押印します(財産目録は自書でなくても可。ただし全ページに署名押印が必要)。
  • 申請できるのは遺言者本人だけです。代理人による申請や郵送での申請はできません。予約が必須です。
  • 預け先は、遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所から選びます。
  • 手数料は、保管の申請1件(遺言書1通)につき3,900円で、収入印紙で納めます。
  • 本人確認のため、顔写真付きの官公署発行の身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)が必要です。
  • 保管された遺言書は、相続開始後に家庭裁判所での検認が不要です。
  • 遺言者の死亡後、原本は50年間、画像データは150年間、保管されます。

注意点も法務省のページに書かれています。遺言の内容について相談には応じてもらえません。また、この制度は、保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。内容に不安があるときは、弁護士などの法律の専門家に相談する、と案内されています。

預けたことを家族が知る方法も、制度の中に用意されています。手続の終了後に渡される「保管証」には保管番号などが書かれており、再発行ができません。法務省のページは、保管証の写しを家族に渡すと確実、と案内しています。このほか、遺言者があらかじめ希望すると、死亡の事実が確認できたときに、指定した人(1人につき3名まで)へ通知が届く仕組みもあります。

公正証書遺言との違いは?

遺言には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類があると、日本公証人連合会は説明しています。このうち、自筆証書の保管制度と公正証書遺言を、公式資料で確認できた範囲で並べます。

項目自筆証書遺言書保管制度(法務局)公正証書遺言(公証役場)
作成本人が全文を自書する(財産目録を除く)本人が公証人と証人2名の前で内容を口頭で伝え、公証人が文章にまとめる
預け先法務局(遺言書保管所)原本は公証役場等で保管
費用保管申請1通につき3,900円政令で定められた手数料。相談は無料
家庭裁判所の検認不要不要
内容の相談応じてもらえない公証人に相談できる
自宅などへの出張資料に記載なし(申請は本人が保管所に出向く)公証人が自宅、老人ホーム、介護施設、病院などに出張して作成する例がある

日本公証人連合会は、公正証書遺言の手数料は財産の価額などによって変わるとし、相談は全て無料と案内しています。金額の目安は、最寄りの公証役場で確認できます。

あわせて、日本公証人連合会は、遺言は「判断能力がある元気なうちに」しておくことが望ましいとし、判断能力がなくなってしまえば遺言はできない、と説明しています。遺言は満15歳以上であればいつでもでき、取消し(撤回)や変更も、いつでも何回でもできます。どちらを選ぶかは、費用や手間、内容の複雑さなどを見て、専門家や窓口に確認してください。

医療や介護の希望を話しておく「人生会議(ACP)」とは?

厚生労働省は、「人生会議」を、「もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組」と説明しています。以前は「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」と呼ばれていた取組に、親しみやすい愛称をつけたものです。

ここで大切なのは、「繰り返し話し合う」と書かれている点です。一度で全てを決める取組としては説明されていません。

家族で最初に確認しやすい項目は、法務省と日本司法書士会連合会が作成したエンディングノートの記入欄に例があります。介護が必要になったときの場所の希望(自宅、ヘルパーを頼みながら家族と暮らす、病院や施設など)、病名や余命の告知を希望するか、延命治療についての希望、そして誰の意見を尊重してほしいか、といった欄です。

エンディングノートは、何を書いておくノート?

法務省・日本司法書士会連合会の「エンディングノート」は、自分に何かあったときに、家族が判断や手続を進めるために必要な情報を残すためのノートと説明されています。生活の備忘録にもなり、これまでを振り返るきっかけにもなる、とも書かれています。

記入欄の項目は次のとおりです。親と話すときの確認項目として使えます。

  • 名前、住所、本籍など。もしもの時に連絡したい人(親類、友人、かかりつけ医)。
  • 財産:土地・建物、預貯金、生命保険、有価証券、借入金やローンなど。
  • デジタルデータ:携帯電話やパソコンのログイン情報、オンライン口座、有料サービスの契約状況など。
  • 遺言書を作っているか、作っている場合の保管場所(自宅、公証役場、法務局など)。
  • 介護や医療の希望(上に書いた項目)。
  • 葬儀とお墓の希望。

同じノートには、記入する際の心構えにあたる説明もあります。最初のページに「わかるところまでで結構です」、家系図に「思い出せる範囲で書いてみましょう」とあります。不動産について、資料から書き写すのが面倒な場合は、取り寄せた資料をこのノートと一緒に保管しておくだけでも、あとから判断や手続をする人の助けになる、とも書かれています。

パスワードなどの記入欄について、ノートは「他人に見られると不正アクセスの可能性」があるため、管理には十分に注意するよう求めています。どこに保管し、誰に場所を伝えるかも、家族で決めておく項目です。

運転:不安が出たときの相談先と、返納のしくみ

警察庁の資料から、確認できたことを書きます。

  • 安全運転相談ダイヤル「#8080」:加齢に伴う身体機能の低下などで運転に不安のある高齢ドライバーと、その家族が、都道府県警察の担当職員(看護師などの医療系専門職員をはじめとする専門知識の豊富な職員)に相談できる窓口です。発信場所を管轄する都道府県警察の窓口につながります。受付は原則として平日の執務時間内で、通話料は利用者の負担です。
  • 警察庁は、「これまでのような運転ができなくなった」「危ないから運転はもうやめてと家族に言われた」といった場合も、この窓口を使ってよいと案内しています。
  • 運転免許証の自主返納:運転が不要になった人や、運転に不安を感じるようになった高齢ドライバーは、自主的に返納できます。申請場所や必要書類は、各都道府県警察の運転免許センター等に問い合わせます。
  • 運転経歴証明書:返納した人、または免許を更新せずに失効した人は交付を受けられます。ただし、返納後5年以上、または失効後5年以上たつと交付を受けられません。平成24年4月1日以降に交付されたものは、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として使えます。
  • 一部取消し:普通自動車は卒業するが原動機付自転車は運転したい、といった場合に、必要な種類の免許だけを残せます。一部取消し後は免許が残るため、運転経歴証明書は交付されません。
  • 認知機能検査:免許の更新期間が満了する日の年齢が75歳以上の人は、認知機能検査等を受ける必要があります。警察庁は、この検査は簡易なもので、医師の診断や医療検査に代わるものではない、としています。

返納した方への自治体や事業者の支援は、地域によって違います。警察庁は、全日本指定自動車教習所協会が運営する「高齢運転者支援サイト」を案内しています。返納の特典や代わりの移動手段は、運転免許を返納した人の特典、親の免許返納(手続き・代理返納・移動手段)、返納後の車の処分にまとめています。

運転をやめる時期について、年齢で決まった基準は、確認した警察庁の資料にはありません。免許返納を実際に経験した家の話は、体験ページに分けて書いています。

住まい:住み替えや施設は、まず窓口に聞く

厚生労働省は、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を進めており、その中核的な機関が地域包括支援センターだと説明しています。

このため、住み替えや施設のことを考え始めたら、まず担当の地域包括支援センターに聞くのが入口になります。親が今の家に住み続けたいのか、住み替えを考える余地があるのかは、親の気持ちを聞くところからです。

施設の種類ごとの費用や入居条件は、このページでは確認していません。窓口で現在の情報を聞いてください。

悪質商法・特殊詐欺への備えは?

警察庁は、特殊詐欺では何よりも「犯人と話をしない」ことが大切、としています。家族で話しておける内容を、警察庁、消費者庁、国民生活センターの資料から拾います。

  • 電話でお金の話が出たら、一旦電話を切り、すぐに家族などに相談する(警察庁)。
  • 家族にかけ直して本物かを確認する。最寄りの警察署にかけ直して確認する(警察庁)。
  • 警察庁は、受け子と呼ばれる犯人がお金を引き取りに来るので、本物のお子さんが来ることはない、と説明しています。
  • 犯人が、金融機関の窓口で引き出す理由を聞かれたときの答え方まで指示してくることがある(警察庁)。
  • 「還付金がある」「ATMで手続きができる」は詐欺(警察庁)。
  • 電話での対策として、番号表示・非通知拒否サービス、防犯機能付き電話(自動通話録音など)、普段海外と電話しない場合の国際電話の利用休止がある(警察庁)。
  • 困ったときは一人で悩まず、消費者ホットライン「188」に相談する。市区町村や都道府県の消費生活センター等の窓口につながる。相談は無料で、通話料は利用者の負担(消費者庁)。

国民生活センターは、「見守り情報」として、高齢者・障がい者に起きている消費者被害を、イラスト入りのリーフレットでわかりやすく公開しています。家族で見て話すきっかけになります。

話すときの心構えは、公的資料にどこまで書かれている?

「どう切り出すか」「どう伝えれば親が受け止めやすいか」といった話し方のコツは、今回確認した公的資料には、詳しく書かれていませんでした。そこで、資料に書かれている範囲だけを挙げます。

  • 一度で決めなくてよい:人生会議は「繰り返し話し合う」取組とされています(厚生労働省)。
  • わかる範囲でよい:エンディングノートは「わかるところまでで結構です」「思い出せる範囲で」と書かれています(法務省・日本司法書士会連合会)。
  • 資料があれば写さなくてもよい:書き写す代わりに、取り寄せた資料を一緒に保管するだけでも助けになります(同ノート)。
  • 決めたことも変えられる:遺言は取消し・変更がいつでも何回でもできます(日本公証人連合会)。
  • 家族も相談してよい:運転の不安は、本人だけでなく家族も安全運転相談に連絡できます(警察庁)。
  • 一人で悩まない:詐欺の相談は188に、介護や暮らしの相談は地域包括支援センターに(消費者庁、厚生労働省)。

成年後見や家族信託を使うかどうかが親本人の意思を前提にすることは、成年後見制度の解説に書いています。

コピーして使える確認チェックリスト

親と話した結果をメモするための、コピー用のリストです。「決まっていない」「分からない」と書くこと自体が、次に誰かに聞く項目になります。

  • □ 親の住所を担当する地域包括支援センターの名前と電話番号を控えた。
  • □ 通帳、印鑑、保険証券、年金関係の書類の置き場所を聞いた。
  • □ お金の管理を誰かに頼むとしたら誰か、親の考えを聞いた。
  • □ 任意後見・家族信託・遺言について、調べる窓口(公証役場、法務局、専門家)を決めた。
  • □ 遺言書があるか。ある場合の種類(自筆、法務局保管、公正証書)と置き場所を聞いた。
  • □ 法務局の保管制度を使っている場合は、保管証の写しの置き場所を家族が知っている。
  • □ 介護が必要になったときの場所の希望(自宅、施設など)を聞いた。
  • □ 延命治療や、病名・余命の告知についての希望を聞いた。または「まだ決めていない」と記録した。
  • □ 信頼できる人(意見を尊重してほしい人)は誰か聞いた。
  • □ エンディングノートの有無と、保管場所を聞いた。
  • □ 運転する場合:不安が出たときの相談先(#8080)を家族で共有した。
  • □ 運転経歴証明書の申請期限(返納・失効から5年)を知っている。
  • □ 電話でお金の話が出たら、一度切って家族にかけ直すことを決めた。
  • □ 消費者ホットライン188を、親の見えるところに控えた。
  • □ 住み替えや施設について、親が今どう考えているかを聞いた。
  • □ 次に話す日を決めた(人生会議は繰り返し話し合う取組)。

リストは印刷や転記にご自由にお使いください。個別の判断が必要な項目は、窓口や専門家に確認してください。

よくある質問

親が話したがらないときは、どうすればいいですか?

切り出し方や順番を示した公的資料は、今回確認できませんでした。厚生労働省は人生会議を「繰り返し話し合う」取組と説明しているため、一度で全部を決めなくてもよいと読めますが、具体的な進め方は書かれていません。地域包括支援センターに、家族としての相談をしてみる方法があります。

法務局に預けた遺言書は、あとで書き換えられますか?

遺言は、いつでも何回でも撤回や変更ができると日本公証人連合会は説明しています。法務局の保管制度では、保管の申請の撤回をすると預けた遺言書を返してもらえる、と法務省のページにあります。手続には予約が必要です。

エンディングノートに書けば、遺言になりますか?

確認した資料には、エンディングノートが遺言にあたるという説明はありません。日本公証人連合会は、遺言は法律で厳格な方式が定められており、方式に従わないものは全て無効になる、と説明しています。録音や録画も、遺言としての効力はないとされています。遺言として効力を持たせたいときは、自筆証書遺言や公正証書遺言の方式に従う必要があります。

運転免許を返納すると、身分証明書はどうなりますか?

返納した人は、運転経歴証明書の交付を受けられます。平成24年4月1日以降に交付されたものは、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として使えると警察庁は案内しています。ただし、返納後5年以上たつと交付を受けられません。

運転をやめさせたいとき、家族は何ができますか?

警察庁の資料から言えるのは、運転に不安のある高齢ドライバーの家族も、安全運転相談(#8080)に連絡できるところまでです。やめてもらう方法そのものは、資料には書かれていません。

不審な電話があったとき、どこに相談すればいいですか?

消費者トラブルの相談は消費者ホットライン188(消費者庁)です。警察庁は、SNS型の投資詐欺やロマンス詐欺について、当てはまる点があればお金を振り込む前に、迷わず警察に相談を、と案内しています。

このページで分からないこと

次の点は、調べた公的資料では確認できていません。分からないものを断定しないために、あえて書いています。

  • 親への話の切り出し方、順番、言葉選びなど、話し方のコツ。
  • 運転をやめる適切な年齢や時期。
  • 運転をやめた後の代わりの移動手段の具体的な内容(地域ごとに違うため、自治体の窓口で確認が必要)。
  • 地域包括支援センターが、住み替えや施設の紹介をどこまで行うか。
  • 自治体が配布しているエンディングノートの具体例。このページでは、法務省・日本司法書士会連合会のノートを取り上げました。お住まいの市町村が配布しているかは、役所や地域包括支援センターで確認できます。
  • 公正証書遺言の手数料の具体的な金額。財産の価額などで変わります。
  • 遺言の内容や相続税、不動産の扱いなど、法律・税の個別の判断。

これらは、地域包括支援センター、公証役場、法務局、警察の安全運転相談、弁護士・司法書士・税理士などに個別に確認してください。

出典(確認日:2026年11月3日)